御伽 草子 - 御伽草子 ｜日本大百科全書・世界大百科事典｜ジャパンナレッジ

」と苦笑しながら、「仰せに随つて、お前の甲羅に腰かけてみるか。

疑ひながら、ためしに右へ曲るのも、信じて断乎として右へ曲るのも、その運命は同じ事です。

さても此浦は平家の一門果て給ひたる所なれば痛はしく存じ、毎夜此磯辺に出でて御経を読み奉り候。

」 桜桃の坂の尽きるところに、青い薄布を身にまとつた小柄の女性が幽かに笑ひながら立つてゐる。

あなたは私たちに対してはひどく高慢な乙な構へ方をするけれども、女には、からきし意気地が無いんですね。

魚どもは誰に見せようといふ衒ひも無く自由に嬉々として舞ひ遊ぶ。

新日本古典籍データベース 4• さらにまた、あなたは、気持はさつぱりしてゐるし、男つぷりは佳し、と来てゐるから。

それぢや私だつて言ひますが、あなたが私を助けてくれたのは、私が亀で、さうして、いぢめてゐる相手は子供だつたからでせう。

ひつくりかへつたまま、つまり、腹を上にしたまま泳いで、さうして浦島は亀の甲羅にくつついて、宙返りを半分しかけたやうな形で、けれどもこぼれ落ちる事もなく、さかさにすつと亀と共に上の方へ進行するやうな、まことに妙な錯覚を感じたのである。

それでは一体、何のつもりでお前はこの物語を書いたのだ、と短気な読者が、もし私に詰寄つて質問したなら、私はそれに対してかうでも答へて置くより他はなからう。

中国の孝行息子が帝釈天の教えに従って、七草を両親に食べさせ、若返らせたという物語。

でもまた、見渡す限り、ただ薄みどり色の茫洋乎たる大空洞の片隅に、幽かな黒一点をとどめてゐるものが、たとひそれは嘘にしても月の影法師だと云はれて見ると、鯛の大群や火事だと思つて眺めるよりは、風流人の浦島にとつて、はるかに趣きがあり、郷愁をそそるに足るものがあつた。